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18世紀ロマン派のイデオを継ぐ〈Folly〉――NYの公園に建てられたフリーダム建築『Tree wood』。

2014.03.09

みなさんは『Folly(フォリー)』と聞いて、何を連想するでしょうか?

英和辞典でFollyを引くと「愚かな」「ばかげた」といった意味が出てくるので、実際、これに近い意味合いを連想されるか、もしくは「そんな単語そもそも知らない…」という方がほとんどなのでは?と思いますが、今回筆者が出会ったのは、“洋風庭園などにみられる装飾用の建物”としてのFollyです。

詳しく説明しますと、『Folly(フォリー)』とは18世紀~19世紀にかけて、ヨーロッパのロマン派のみなさんの間で流行した「(雨風がしのげたり生活ができるといった)特定の用途を持たない、フリーダムな建物(でもオブジェとはちょっと違うらしい)」の総称で、イメージ的にはこんなものや、こんなもののことを指すのだそうです。

なんだかとても上流階級の香りがするFollyですが、そんなFollyを200余年もの時を経て現代に蘇らせたコンペがあるらしい…と知り、好奇心旺盛な筆者はさっそく調査してみました。それが、いまからご紹介する『Folly』です!

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Follyは「現代的に解釈したFolly(先ほどご紹介したガーデン内に建築するタイプのアレですね)の提示」をテーマに、NYで開催されているコンペティションで、大がかりで実験的な屋外プロジェクトに取り組む新進の建築家&デザイナーに制作の機会を与えるべく、2011年に発足されたのだとか。

コンペの主催者は、建築物の芸術性の向上を目的に、優れた建築物(およびアイデア)を紹介するNYの団体=「アーキテクチュアル・リーグ」と、アート作品を常設する場として1986年に生まれ変わった、クイーンズ地区の公園=「ソクラテス・スカルプチャー・パーク」の2団体。

大まかな概要としては、毎年1月に公募を行い、そこで集まったアイデアを著名な審査員&アーティストが審査して最優秀賞を決定! Winnerには総額5,000ドルが制作費として援助され、3月~5月までの2ヶ月間、ソクラテス・スカルプチャー・パーク内のスタジオや、作業に必要な設備へのフルアクセス権が与えられる…というもの。もちろん、制作後の作品は約一年ほど園内に展示され、インターネットで閲覧可能な電子カタログにも掲載されます。

ちなみに現在も、ソクラテス・スカルプチャー・パークの一角では、昨年開催された『Folly 2013』のWinner=“toshihiro oki architect”によるエキシビジョンを開催中! 名前を見てすでにお分かりかと思いますが、昨年のWinnerはオキ・トシヒロさん率いるNYの建築チーム。オキさんは拠点をNYに移される前、なんとあの“SAANA”でもいくつかのプロジェクトに関わっていらっしゃったそうです。しかし、オキさんは一体どんなFollyを提案したんでしょうか…? ということで、気になるその受賞作をすこし紐解いてみましょう!

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こちらが2013年のファイナリストである“toshihiro oki architect”の中心メンバー、オキ・トシヒロさんです。プロフィールを見ると「1973年に日本で生まれ、海外で育った」のだとか。



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2013年にオキさんらが提案し、見事にコンペを勝ち抜いたのが、この『Tree wood』という作品。これ、タイトルもかなりシャレてるなと思うのですが、みなさんはどんな印象を受けましたか?(筆者は建築物の素材となる“木材”と、その原形である“木”を組み合わせたデザインだからこそ、この“Tree”と“Wood”の並びが生きるんだな!と解釈しました。敢えて日本語に訳すとしたら「木/材」という感じでしょうか?)。このように、目に見える形で木と木材の関係が可視化されることで、作品と木が対話しているかのように見えます。



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こちらは作品のラフスケッチですが、この時点ですでにかなり独創的です。



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こういった、建設中の家などで見かける木の骨組みを“床梁(ゆかはり)”と呼ぶのだそう。これは床板を支えるためだけでなく、未完成の建物をスムーズに移動するのにも役立ちます。作品内部を人が歩いていると、透明なツリーハウスが宙に浮いているようにも見えてくるから不思議です。まさしく、どこから見てもスケルトン。



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よじ登ったり、上から景色を眺めたり…。『Tree wood』が樹木に重なることで、木の周りに人々が思い思いに過ごせる“動的なスペース”が生まれていますよね。まず何より、この作品で樹木との触れ合い方が変わりますし、公園の景色もまた変わって見えそうです。



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角度によっては少々わかりにくいのですが、中央にはこのように豪華なシャンデリアが掛かっています。



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なんと、シャンデリアは夜になると点灯するのだそう! 内部からの明かりがFollyを美しく彩り、昼間とは異なる表情を演出してくれます。



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近くで見ると、加工されていない素のままの木材が使用されているのが分かりますね。木目も見えますし、ところどころ変色したりもしています。そして、骨組みの間を枝が突き出したり、外から枝葉が入り込んだりしているのがなんだか楽しい。



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もしこのままずっと設置したら、公園内の木と共にFollyも成長するのでしょうか? 大きくたくましく育った幹が、あの骨組みを支えるようになったりするのかな…。



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こちらは下から見上げた『Tree wood』。こうして見ると、けっこう高さがありますね。こうした公園にアート性をもつ作品が出現することで、園内の景色がフレーミングされ、木々に詩的なオーラが漂い、公共の場が「見るものに問いかけるインスタレーション」へと変化するんだなあ…。



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これは、作品の位置関係や見え方などを記したレンダリングでしょうか? 公園の中央、木が密集するエリアに作品が展示されていますね。あらかじめ、芝生の延長線上に眺めたり、樹木の下から見上げたり、建物によじ登ったりすることが想定されているのが分かります。



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これは試作用のミニチュア模型ですね。これだけ見ると、一見、なんてことない建築物のように思えるのですが、作品の全体像・ディテール・素材を目にした瞬間に浮かぶ「一体どういうこと?」という疑問を頭からどかさず、ハテナを抱えながら観察してゆくと、徐々にそのおもしろさが見えてくる、という仕組みですね!

※Follyに興味をそそられた方は、ぜひWEB版のカタログ「FOLLY 2013」もご覧ください。主催者側がセレクトした建築家や、ファイナリストであるオキ氏へのインタビューもたっぷり掲載されています!
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さて、いかがでしたでしょうか?

こちらの作品の展示は、2014年3月末まで続くそうで、園内は入場無料なうえに年中無休なので、NYのクイーンズ地区に行かれる方は「アメリカ映像博物館」「アフリカ美術館」「PS1コンテンポラリー・アートセンター」といった近隣施設の観光ついでに、ぜひFolly観賞もなさってみてはいかがでしょうか。

2014年の公募はすでに締め切られているので、そろそろ今年のWinnerが制作に入るころじゃないかな?と思います。次回も、作品の一般公開が始まるのは5月頃。『Folly 2014』の勝者は誰なのか? そして、彼等がどんなFollyをクリエイトしてくれるのか? いまからとても待ち遠しいです!


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