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美しきイスラムの世界。― 極彩色に輝く 〈ローズ・モスク〉の幾何学模様 ―

2014.04.05

読者のみなさまの中で、イランへの渡航歴がある方は一体どれくらいおられるでしょうか? もしいらっしゃるとすれば、かなり旅慣れた方か、貿易業に従事されている(またはいた)方と推測します。筆者も含め、多くの日本人にとって神秘に包まれたイスラームの国“イラン”。その歴史は古く、紀元前3000年頃の原エラム時代にまで遡ります…。

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アーリア人の到来後に王朝が築かれ、紀元前550年頃にはカーマニシュ朝(アケメネス朝)が勃興。以降、幾多の王朝の滅亡と勃興を繰り返しますが、7世紀に入るとイスラム教徒によるペルシア征服が起こり、この時代を境に、イランでのイスラーム文化が花開いていきます。873年に成立したイラン系のサーマーン朝下ではペルシア文学が栄え、10世紀に成立したトルコ系のブワイフ朝時代には、シーア派イスラームの十二イマーム派を国教とした最初の王朝となりました。

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1220年からはじまるモンゴル帝国の征服によって国土は荒廃しますが、16世紀から18世紀始めのサファヴィー朝期には、ペルシア地域を支配した王朝としては初めて、シーア派の一派である“十二イマーム派”を国教とするようになりました。

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18世紀末のガージャール朝時代にはイギリスやロシアなど、列強の勢力争奪の草刈り場の様相を呈し、辛酸を嘗める時代が長く続きました。やがて1921年2月21日に発生したイラン・コサック軍のレザー・ハーン大佐によるクーデターの後、同年4月にイギリス軍が、10月にはソビエト赤軍がそれぞれイランから撤退し、その後に実権を握ったレザー・ハーンは「ガージャール朝廃絶法案」を議会に提出。翌1926年4月に、レザー・ハーン自らが皇帝レザー・パフラヴィーに即位し、パフラヴィー朝が成立します。

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1927年よりレザー・パフラヴィーは列挙国の不平等条約を破棄。さらに、軍備増強、民法・刑法・商法の西欧化、財政再建、近代的教育制度の導入、鉄道敷設、公衆衛生の拡充などの事業を推し進め、イランは近代化を図っていきます。1935年には国号を、正式にペルシアからイランへと変更。

1939年に第二次世界大戦が勃発すると、当初は中立を維持しようとしましたが、1941年8月25日に連合国によってイラン進駐を被り、イラン軍は敗北し、イギリスとソ連によって領土を分割されてしまいました。

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このような悲劇に見舞われながら、第二次大戦後も戦勝国であるイギリス・アメリカによる石油利権の憂き目に遭うなど、暗い時代が長く続きます。また、60年代から70年代にはパーレヴィ皇帝による独裁支配が強まり、一般市民の自由はどんどん抑圧されていきました。皇帝の独裁的統治によるフラストレーションが爆発し、1979年2月にイラン革命が勃発。簡単に説明しますと、皇帝から国外追放を受けて亡命中だったルーホッラー・ホメイニー氏を精神的指導者とするイスラム教十二イマーム派(シーア派)の法学者たちを支柱とする、国民の革命勢力が力を増し、皇帝の専制に反対して、政権を奪取。このイラン革命は、民主主義革命であると同時に、イスラーム化を求める反動的回帰でもあるため、“イスラム革命”とも呼ばれています。

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革命による混乱が続く1980年には、隣国イラクのサダム・フセイン大統領が、イランとイラクの国境をシャット・ル=アラブ川の中央線と定めた「アルジェ協定」を破棄し、イラン南部のフーゼスターン州に侵攻してきたのを機に、イラン・イラク戦争が勃発。この破壊的な戦争は1988年まで続きました。

イラン革命後の国内政治に目を向けると、改革派と保守派の争いは今日まで続いています。直近の大統領選挙(2013年)では、保守穏健派のハサン・ロウハーニー氏が勝利し、2013年8月3日に第7代イラン・イスラーム共和国大統領に就任しました。

細かい時代背景は割愛させていただきましたが、以上が大まかなイラン史となります。

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さて、これまで随所に渡って掲載してきた美しい写真の数々は、19世紀末のガージャール朝時代に建てられた「ナシル・アル・モルク・モスク」の内部です。

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イラン南西部の都市・シラーズにあるこのモスクには、街のシンボルであるバラの花が多く描かれているため、別名「ローズ・モスク」とも呼ばれています。このモスクの最大の特徴は、息を呑むほど美しいステンドグラスによる光の演出です。礼拝堂の側面に配置された極彩色豊かなステンドグラスに陽光が射すと、この世のものとは思えない美しい光景が目の前に広がります。幼少のころに初めて万華鏡をのぞいたときのような、言葉にできない深い感動が、モスク内のそこかしこに満ちあふれています。

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多くの日本人にとって、神秘のベールに包まれたイスラムの世界。かつて世界の文化をリードしていたペルシアの血を継ぐイランに足を踏み入れ、この「ローズ・モスク」の美しすぎるステンドグラスの光を網膜の裏に焼き付けたとき、私たちは初めてこの国がもつ深い芸術性を真に理解できるのではないでしょうか。そして、国際情勢における“色眼鏡”を外してこの芸術大国とまっすぐ対峙したとき、私たちは初めてその幾何学模様が織りなす“未知なる美”を、正しきピントでとらえることができるのではないかと考えます。

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最後に、イランに興味を持たれた方にぜひお勧めしたい映画があります。ポップミュージックの規制が厳しいイランの首都・テヘランを舞台に、若者たちの音楽への情熱と自由への希求を描き、2009年カンヌ国際映画祭において<ある視点>部門特別賞に輝いた、バフマン・ゴバディ監督の名作『ペルシャ猫を誰も知らない』

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実在した事件・場所・人物に基づいたリアリティのある作品世界もさることながら、当局に無許可でゲリラ撮影されたその映像は、初めて深海を覗いたかのような、驚きと興奮に満ちています。イラン革命後のテヘランの街並みを、ここまで細部に渡ってカメラに収めた映画は恐らく初めてかと思われるので、イラン旅行を計画される前に、ぜひご観賞なさることを強くお勧めいたします。イランへの憧憬の念が、さらに確固たるものになるはずです。


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